ジャズを中心としたDJ、北欧家具の収集など多様な趣味嗜好を持ち、深い造詣と強いこだわりを持つ施主。そのマインドを理解し受けとめ、家に落とし込めるのは、独創性に富み、よりマニアックに“施主にとって心地のいい家”を突き詰めて設計する石上さん以外にいないだろう…そう思わせるたたずまいです。
施主は「きれいに整った庭ではなく、自然に生い茂った雑木林のような場所に住みたい」と希望。建設地は住宅街ですが、石上さんは土地を見て「十分に要件を満たせる」と感じたそうです。南側は田圃だったため、まず南に大きな主庭を計画。「もともと森だった場所を拓いて家を建てた」というストーリーを想定し、再構築を図りました。
主庭に面したLDKは外部感のある開放的なワンフロアですが、広すぎるとかえって落ち着かないため、梁や柱でなんとなくの境界線を意図。人間のスケール感に合わせて空間にメリハリをつけるアイデアです。家具や照明も、空間をつくる上で大切な要素。石上さんは手持ちの家具の居場所を前提として、プランを作成しています。ダイニングテーブルとイスは、施主が所有する北欧家具「Yチェア」に合わせて家具職人にフルオーダーしました。