新日本建設株式会社
二宮真紀
暮らしのなかで居心地のいい空間や時間をつくることで感じられる、幸福感を意味するデンマークの言葉「HYGGE（ヒュッゲ）」。家で過ごす時間が増えた今こそ、その意味を大切にしたいと考えた建築士の二宮さん。「北欧」の豊かな暮らし方と「和」のエッセンスを取り入れた西条喜多川モデルハウスを設計しました。
サブテーマは「小さくて豊かなお家」。玄関土間からリビングへの動線である通り土間、勾配天井の吹き抜けにより邸内全体がつながるレイアウトなど、限られた敷地で大らかに暮らすアイデアを随所に感じられます。また家と庭をシームレス※につなぐことで、家に居ながらにして自然を身近に感じられる住まいを意識されたそう。
※シームレス…内と外の境界を感じさせないように空間をつないだ状態
杉や檜といった国産の無垢材や珪藻土の塗壁など、邸内も自然素材をふんだんに取り入れて心地よく。北欧の考え方をベースに、地域に根付いた素材を用いて日本の風土に合わせた家をつくることを大切に、一つひとつの空間を造作により築き上げていきました。特徴的なのは、畳コーナーの壁やダイニングテーブルなど、有機的な曲線を取り入れた柔らかなデザイン。
木のナチュラルな空間のアクセントに、ヘリンボーン柄のタイルや真鍮の華奢なデザインを添えて。少しヴィンテージな素材感が、住まいに奥行きをもたらしてくれます。現在、見学や貸切暮らしの体験も実施中なので、リアルサイズのモデルハウスで実際の暮らしを体感してみてはいかがでしょう。
四角い箱型の外観ですが、玄関まわりに変化をつけて。外壁は、柔らかな風合いのそとん壁※。自然素材ならではの塗り味がいい感じ。玄関まわりの無垢材や植栽とよく馴染んでいます。
※そとん壁…シラス台地の「シラス」を主原料にした外壁材
玄関アプローチの右側の壁は、真っ直ぐではなくあえて斜めに角度をつけているのも面白い。上部の木製ルーバー※の向こうにはベランダが広がっています。
※ルーバー…「羽板」と呼ばれる細長い板を間隔を空けながら平行に並べたもの
玄関前に設えたつくばいを流れるのは西条のうちぬき。名水の癒しを感じられる空間です。真鍮の華奢なデザインで洗練された雰囲気に。
手前の玄関土間から通り土間、リビングへの目線。自然素材に満たされた空間に、タイルのマットな質感が効いています。通り土間から直接、庭に出られる動線も秀逸。
吹き抜けの開放的なリビング。通り土間のどこからでもひょいとリビングに上がれます。左側の曲線を描いた壁の向こうには畳コーナー。
家族の顔が見渡せる、円形のダイニングテーブル。手づくりのぬくもりを感じられる造作の家具や建具も、木の扱いを得意とする新日本建設の特長です。
半独立型のキッチン。清潔感のある白いタイルで仕上げた壁には飾り棚を設置。向かって右側の収納棚も造作により、使い勝手よく仕上げました。
高さ、大きさの異なる2つの丸鏡にヘリンボーンデザインのタイルや収納扉がお洒落な洗面室。収納扉は、表と裏で杉と檜の異なる素材を体感できます。
勾配天井の吹き抜けで、小さくて豊かな家を表現。
2階のウォークインクローゼットは寝室と子ども部屋のどちらからもアクセスできるレイアウト。家族のワードローブを1箇所にまとめることができます。
吹き抜けに面した2階のホールは、床も天井も自然素材に包まれたナチュラルな心地よさ。勾配天井でちょっと低めの天井が妙に落ち着く空間です。
植栽がすくすくと育つ庭。テーブルセットの下に敷いた石タイルは円形にするなど、丸モチーフがアクセントの邸内との統一感を演出しています。
